★認知症・50話:第10話 水補給と血圧管理

物忘れはアルツハイマー病のほかに、
脳血管障害により発症することもあります。

生活習慣病により動脈硬化をきたすと、
脳血管が閉塞(へいそく)して、血液が流れなくなり、
脳に障害が起きます。

時には脳出血をきたすこともあり、
進行すると、脳血管障害の認知症になる可能性があります。

 人のからだには水が必須です。

水分が不足すると血液が濃くなり、血管が詰まりやすくなります。
高齢者の中には、排尿の回数が多くなることで、
夜間の水分補給を制限されている方がおられます。
しかし、脳の血管が詰まるのは夜間に多いことを考えると、
ぜひ、寝る前にコップ一杯の水を飲むことをお勧めします。

 お茶やコーヒーは利尿作用や興奮作用があるため、
白湯(さゆ)や体の組成に近い電解質の入った飲み物が良いでしょう。
100~150ミリリットル程度の水分をとることで、
夜間の排尿回数が大きく変わることはないでしょう。

 一方、血圧は夜間には緊張がとれて、低くなります。
その結果、脳血管の動脈硬化がある場合には、
部分的に脳への血液供給が少なくなり、
手足のまひをきたすことがあります。
手足のまひが生じるほどひどくなくても、
脳への血液の供給が繰り返し低下すると、
広い範囲の脳細胞障害をきたし、
認知症に陥る危険性があります。

 現在、高血圧のため薬を服用されている方は多いと思います。
自宅でも血圧を測定していただき、
医療機関での測定値と大きく異なる場合には、
その記録を主治医に見てもらいましょう。
血圧の過剰低下に注意することで、
認知症を予防することも期待できます。
(大阪市立大大学院医学研究科教授・老年内科学、三木隆己)

毎日新聞 2007年6月8日 大阪朝刊