★世界規模でアブラ警報発令?~広がるトランス脂肪酸対策

近年、世界中でアブラが問題となっている…といっても、
食べる方の油脂類の話。

この脂肪は「トランス脂肪酸」と呼ばれるもので、
取りすぎると心臓病や脳卒中の最大の原因である、
動脈硬化につながる恐れがあるという。
アメリカを始めとした各国では、
すでに規制や表示義務などの取り組みがスタートしているようだ。

米・大手チェーン店が避けるトランス脂肪酸とは?

2006年10月、アメリカのケンタッキー・フライド・チキン(KFC)は
トランス脂肪酸を含む食用油の使用を、5,500店舗で07年4月までに
ストップすると発表。

なんでも、2年間に渡ってトランス脂肪酸を含まない
調味油を研究した成果だという。
時を同じくして、米バーガーキングもトランス脂肪酸を
使わないための取り組みをスタートすると発表。

さらに、米マクドナルドに至っては、02年に
その方針を明らかにしていたという。
なぜ、大手のチェーンがこのような取り組みを始めたかというと、
トランス脂肪酸が健康に与える悪影響を
無視できなくなったからだろう。

さて、このトランス脂肪酸というのはいったい何なのだろうか。

まず脂肪酸とは、食品の三大栄養素のひとつ、
脂肪を構成するもの。トランス脂肪酸とは脂肪酸の一種で、
マーガリンやショートニングなどの加工油脂や、
その加工油脂を原料として製造される食品に含まれている。
内閣府食品安全委員会によると、その生成は下の3つだという。

(1)
油を高温で加熱する過程に生成
(2)
植物油等の加工に際し水素添加の過程において生成
(3)
自然界では牛など(反芻動物)の第一胃内でバクテリアにより生成(脂肪や肉などに少量含まれる)


次に、トランス脂肪酸の作用を見てみよう。
体内に入ったトランス脂肪酸は、血液中の悪玉コレステロールを増やし、
善玉コレステロールを減少させるという。

これはつまり、動脈硬化の原因となり、心臓病や脳卒中の
リスクを高めることにもなりかねない…ということ。
そこで、アメリカを始めとした各国でも対策に乗り出したというわけだ。


対策はワールドワイドに…その時、日本は?

アメリカでは、2004年8月にトランス脂肪酸は
全食事中の1%未満という食事指針案が発表された。

そして06年1月、加工食品にはトランス脂肪酸の表示が義務づけられた。

一方カナダでは、05年12月から栄養成分表に
トランス脂肪酸の表示義務化がスタート。

ヨーロッパに目を向けると、デンマークでは04年1月から、
国内すべての食品のトランス脂肪酸含有率を2%までとする、
という制限が設けられた。

世界で盛んに取り組みが行われる中、日本ではどんな状況か気になるところ。

厚生労働省が1999年に発表した
「第6次改訂日本人の栄養所要量」によると、トランス脂肪酸については、
動脈硬化のリスクが高まるとの言及がなされている。

しかしながら、前述の内閣府食品安全委員会のレポートによると、
アメリカでは1人1日あたりトランス脂肪酸の摂取量が平均5.8gに対し
日本は1.56gと低い数値。
摂取エネルギー全体中の割合を見ても、
アメリカ2.6%に対し日本は0.7%という低値。

そのせいか、あまりこれといった対策はとられていないのが現状だ。
日本でも肉料理や油分の多い料理を食べる機会が増えた昨今、
われわれも「トランス脂肪酸」という言葉を
耳にすることが増えるかも知れない。

社会的な取り組みは今後に期待といったところだが、
やはり、脂質の摂り過ぎと私たちの健康の関係は無視できない問題だ。
自分自身のためにも、油を選ぶ目を養っておくようにしたい。